創文社オンデマンド叢書

トーマス・マンの政治思想

失われた市民を求めて

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商品説明

本商品は「旧ISBN:9784423710814」を底本にしたオンデマンド版商品です。
初刷出版年月:2015/03/01

よるべき価値基準が失われた世界で、実存的社会的中心をどこに求めるか。第一次世界大戦からワイマール期を経てナチズムの時代を生きた作家、トーマス・マンの思想的歩みは、この問いとの格闘の軌跡であった。本書は、マンの小説と論説の大部分を同時代の政治状況への応答と捉え、その政治思想を、市民性との関わりを軸に明らかにする。初期作『ブッデンブローク家の人びと』『非政治的人間の考察』において、マンは中世都市を素材に市民的世界の原理を検討し、内面的領域と政治の分離を試みたが、『魔の山』執筆時以降、次第にその主張を放棄し、個人の内面と共同体を結びつける適切な方法を模索するに至る。この思想的変遷を経て、マンは宇宙論と認識論を構築し、教養と人文主義の再興が社会的連帯に寄与すると期待して、それを可能にする政治体制として社会主義に希望を託す。しかし、ナチズムの台頭によりその実現を阻まれ、亡命生活へと入っていく。高まる危機感の中で彼が主張した戦闘的デモクラシーとはどのような政治体制だったのか。天才的芸術家による秩序、「上からのデモクラシー」のもつ意味とは何か。そして晩年、アドルノとの共同作業の末に結実した『ファウストス博士』の音楽論がもたらす帰結とは何かを、作品の精緻な読解を通じて解明する。内外の膨大なマン研究を礎に、政治的作家という側面を浮き彫りにし、政治思想史研究に物語と政治という新たな息吹を吹き込む野心作。

【目次より】
凡例
序章
第一章 芸術家と市民 初期作品にみる市民の諦念から芸術家のイロニーヘの移行
第二章 共感と政治 『非政治的人間の考察』における内面性と政治の分離
第三章 共和国のエートスを求めて 革命期および『魔の山』執筆時における有機体概念の発見
第四章 個人と社会(一) 教養概念と共同性をめぐるドイツ精神史
第五章 個人と社会(二) 『ゲーテとトルストイ』を中心とした一九二〇年代の教養論
第六章 非合理性と真理 「雪」と「黄泉下り」における認識論的探求と物語論
第七章 精神と自然 亡命初期の逸巡から戦闘的人文主義論へ
第八章 文化と野蛮 『ファウストス博士』を中心とした一九四〇年代のナチズム論
第八節 芸術作品と社会 マンとアドルノの比較から
結語
あとがき

参考文献

著者・編集者

著者:速水 淑子

慶應義塾大学・関東学院大学非常勤講師

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