創文社オンデマンド叢書

コンスタンの思想世界

アンビヴァレンスのなかの自由・政治・完成可能性

堤林 剣 (著者)
¥ 7,150 (本体: ¥ 6,500 + 消費税: ¥ 650)
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商品説明

本商品は「旧ISBN:9784423710715」を底本にしたオンデマンド版商品です。
初刷出版年月:2009/04/01

バンジャマン・コンスタン――19世紀フランス自由主義の代表的論者と目されながら、政治、道徳、宗教、文学など多岐にわたるその思想を総合的に捉えロジカルな構造を解明した研究書はいまだ存在しない。本書では、そうしたコンスタン自身のテクストが持つ多様性と歴史的コンテクストの複雑さを貫く一本の軸として、これまで等閑視されてきた彼のペルフェクティビリテ論に注目する。 共和政、帝政、王政のはざまで揺れ動くフランスにおいて、社会と人間とに透徹した眼差しを注ぎながら、個人の、そして人類の完成可能性に賭けたコンスタンの意図とは何だったのか? コンスタンの思想世界の全体像とともに、それが現実の政治空間でいかなる力と限界とを負っていたか、その「アンビヴァレンス」を見据えることで近代における「政治的なるもの」の姿を抽出する――歴史をより普遍的な主題と結びつけつつ問い返す本書は、思想史叙述の新たな可能性を模索する一つの試みである。

【目次より】

凡例
序論 問題の所在
第一節 コンスタンの一貫性とアンビヴァレンス
第二節 本書の構成
第三節 コンスタンの伝記的背景
第一部 問題史的コンテクストとコンスタンの政治思想
第一章 代表観念の歴史的展開と権力の問題
第一節 歴史のアンビヴァレンスと一般意志の勝利 コンスタンの政治的課題
第二節 権力に関する中世的想像力
第三節 人民主権と政治的代表観念の展開
第二章 フランスにおける代表制と人民主権の問題
第一節 アンシャン・レジームからフランス革命へ
第二節 恐怖政治の論理とそれに対抗する政治原理の模索
第三章 コンスタンの政治思想とその理論的構成
第一節 近代人の自由と近代社会
第二節 主権制限論
第二部 ペルフェクティビリテ論の基底性と統合的作用
第四章 ペルフェクティビリテ論 内面的ペルフェクティビリテを中心に
第一節 四種のペルフェクティビリテ
第二節 内面的ペルフェクティビリテ 個人レベルから集団レベルヘ
第三節 高貴な道徳と一般道徳
第四節 一般道徳と公共精神・世論
第五節 理性とその限界
第六節 一般理性の働きと一般道徳、世論、政治参加
第七節 道徳、法律、義務、抵抗、犠牲
第八節 道徳的進歩、真理、変遷する正義観念
第九節 自然権と社会契約
第一〇節 道徳的進歩と平等
第五章 ペルフェクティビリテ論の総合的展開
第一節 ペルフェクティビリテ論における社会経済的発展と宗教的進歩の位置づけ
第二節 宗教感情および宗教観念の特質
第三節 宗教感情と自由との相互依存性 自由な宗教と司祭主義的宗教との対立
第四節 宗教、道徳および政治的権威
第五節 思想と信仰の間で ペルフェクティビリテヘの賭け
第三部 テクストとコンテクストの交叉における闘争 二つの著作を中心に
第六章 『政治的反動論』を中心に
第一節 コンスタン カント虚言論争
第二節 『政治的反動論』の狙いとその時政的意義
第三節 原理をめぐる論争
第四節 ホームズのコンスタン解釈とコンスタンの偽善批判
第五節 アンビヴァレンスからの問い その一
第七章 『征服の精神』を中心に
第一節 『征服の精神』におけるナポレオン批判 ナポレオンのアナクロニズム
第二節 ナポレオン支配の時代適合性 コンスタンのアナクロニズム
第三節 コンスタンによる「栄光」の再定義の試み 近代に適合的な栄光観念を求めて
第四節 アンビヴァレンスからの問い その二
むすび アンビヴァレンスの残響のなかで
あとがき

参考文献


著者
堤林 剣(ツツミバヤシ ケン)
1966年生まれ。政治思想史学者。慶應義塾大学教授。慶應義塾大学経済学部卒業、ケンブリッジ大学大学院政治思想選考ph.D.。専門は、近代政治思想史。
著書に、『コンスタンの思想世界』『政治思想史入門』などがある。

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