創文社オンデマンド叢書

わが庭の寓話・動物譚と植物誌

シリーズ:尾崎喜八の著作

¥ 4,730 (本体: ¥ 4,300 + 消費税: ¥ 430)
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商品説明

本商品は「旧ISBN:9784423920251」を底本にしたオンデマンド版商品です。
初刷出版年月:1953

【内容紹介】
詩人、随筆家、翻訳家、また、クラシック音楽への造詣も深い著者は、山や自然を描いた詩や散文の秀品を多く残した。

「この仕事について
ジョルジュ・デュアメルの『わが庭の寓話』との語らいを漸ようやく終わり、私はやれやれという気持で今一息ついている。彼と手を連ねてゆっくりとその邸内や庭や近隣の田舎を歩きながら、どんなに彼の話を聴き、どんなに色々の物を見、どんなにたくさんの事柄を学んだことだろう。思えば友であると同時に先輩であり、又一人の賢者でもあるデュアメルという人間を、その日常生活の中で観察するという幸福を私は持ったのだった。そして又この友はさまざまな機会に暗示を与え、それとなく教えを垂れて私を賢くした。もしも彼がいなかったならば、もしも彼から注意されなかったならば、どれだけ多くの貴重な事を私が見過ごし、聴き流してしまったことだろう。
 「僕も寓話を書けたらばと思います。僕の庭の寓話を。しかし残念な事に僕は庭を持っていないのです」と言って嘆く或る青年の言葉が一晩じゅう彼を考えこませる。そして彼はこう言う。「まだ庭という物を持たなかった頃、私はリュクサンブールの林の中で寓話の咲くのを眺めたものだ。熱心な愛好者にとって、寓話を育てるためにならほんの小さな庭が一つあれば充分だ」そして控え目に言う、「私ならば窓のへりに置いた一鉢からでも、それを生長させるだろうと思うのだが」と。
 こう言われてみて、さて今自分の窓からの狭い谷間の風景を眺めただけでも、デュアメルのような心と眼とをもってすれば、寓話の花は此処にも彼処あそこにも咲いている。時しも秋の終わり冬の初めで谷を囲む山麓の林は黄に赤に、鳶色に紫に皆美しく彩られ、その上に拭き清められたような青空がひろがり、穏かな日光が燦然と照り渡っている。そしてたまたまその大空の西の方にたった一つ浮かんでいる白い小さい片積雲が、語られた物語の終わりの一句か、語られる話の書き出しのように見える。しかし「窓のへりの一鉢」どころか窓の向うの豊麗な風景からでさえ、もしもわれわれに表現の力と豊かな人生智とが無ければ、たった一つの寓話でも此処から生み出すことはできないだろう。」(本書より)

【目次より】

わが庭の寓話
無心の庭 ボアズの目ざめ 放棄された蟻塚 腹黒 ジャム 墓所の選定 旅行の必要  庭の監理 性格の強さ 完全のための弁護 私は見た、彼ら二本の実桜が… ニューヨークの群衆 古い木の柱の歎き 港での難破 霞む眼をした馬 世代の角逐 節制の法則  果実の神 砂糖大根の反逆 英国式教育の危機 ひるがお(一名 昼間の麗人) うぬぼれた植樹者 償いがたい損失 殺す 矯正し得ぬことども ディック、或いは義務の観念 憂鬱な仕事 鼠狩 更に大いなる力の場合 哲学者の夢想 実例の力 形式主義の食客 主人の耳 蜜蜂と蜘蛛 群衆中の苦悩 一匹の猫からの教訓 若い病人 郷愁の書取  我ら、別の文明が… 季節 招待状 昔の兵隊 エレオノール、又は誠実な魂 均衡の法則 怠け者の生徒のための口頭弁論 愛の眼 深淵に臨んだ都市 逆境の利益 感傷的な散歩、又は緑の贈り物 伝説化された共和国 節操なき者 能力についての短い問答 諺の讃 流寓の苦しみ 使者 専門家と哲学者と予言者と しあわせな道路 路上の話題 徳の曲折 繁栄の法則 天使の喇叭 八月四日の夜 成功の苦味 祈っている牝山羊 現世的な富の軽蔑 三つの格言 世界の音楽 打ち捨てられた墓 丘と川 無作法者 詩人と獅子 利口な花売娘 権力の哲学 アリースと老人たち 慎重な寄食者 ささやかな報償 寓話の愛好者 庭の戒め 又の世のための草案 夕べの風のためのコンチェルト
動物譚と植物誌
憐愍を祈る聖詩篇 金花虫の全盛とその衰微 生命の偉大な徳 深淵の底の孤独 夜明け前の予言 疑わしい同盟者 拡大鏡を持ったマクベス夫人 不運なデカルト学派  礼拝のダンス いらだった音楽家 サンソンへの呼びかけ 使徒 勝利者 過去の讃美者 浪費派 ベルトランとラトン デュク・ド・クラランス商会 輝かしい孤独 独裁者の教義問答 ブラック伝の断片 前兆 王は死んだ。王ばんざい! ベルグソン学徒  閨房の番人 玄関先での話題 ホルモンの魔術 上位的人格目的 恩赦の効果 文法上の一疑点  家の中の猫 希望の逆説 愛の感情の好ましい進化 蝶の舞 永遠に求める者への勧告  好かれる技術について 知識と徳と経験 魔法使いの弟子大喜劇女優 密輸入の些小な儲け 口実のない世界 目に見えぬピラミッド 法の精神 詩人の飛躍 一徹な相手  庭 貧者の雅量 天国からの消息 渡り鳥 逃避の拒絶 強化されたセメント 旅の鳩 休息、わが空しい企て 慈悲のアマチュア 傷 連通管 むだな用意 ヴォルテールの世紀 防備の悪い砦 エレミアの再起 試煉の選択 怪物のにおい 物 信頼の代金 水晶ガラスの杯 祖国の観念 おお、私の国 赤帽の泣き言 羽根飾りのついた収穫 ジャン・ジャックの亡霊 神聖な根 小さい勇者 解放運動 素朴な解釈 疑念なく 現実主義的精神 帝国の創建者 罰せられた野心家たち イカロス 神秘な来客 永遠の運命 不意の豊作 浪漫派の残忍さ 死と復活 樹木 もろい不滅性 永遠の糸 植物学者にとっての一つの問題 指導された経済 イール・ド・フランス 嘲弄的な野心など


著者
ジョルジュ・デュアメル
1884~1966年。フランスのユマニスムの作家、詩人。
代表作に、『パスキエ家の記録』、『サラヴァンの生涯と冒険』などがある。

訳者
尾崎 喜八(オザキ キハチ)
1892~1974年。詩人、随筆家、翻訳家。京華商業学校卒業。山や自然を主題とした詩や散文、エッセイの佳品を多く残す。クラシック音楽への造詣も深い。
著書に、『詩集 空と樹木』『高層雲の下 詩集』『曠野の火 詩集』『旅と滞在 詩集』『山の繪本 紀行と隨想』『雲と草原』『行人の歌 尾崎喜八詩集』『雲』『詩人の風土』『高原詩抄』『比の糧 詩集』『組長詩篇 詩集』『二十年の歌 詩集』『詩集 同胞と共にあり』『麥刈の月』『夏雲 尾崎喜八詩集』『残花抄 尾崎喜八集』『高原暦日』『美しき視野 自然隨筆集』『碧い遠方』『尾崎喜八詩集』『尾崎喜八詩集』『花咲ける孤獨 詩集』『わが詩の流域』『山の詩帖』『歳月の歌 詩集』『尾崎喜八詩文集 第1~第10』『自然手帖』『さまざまの泉』『田舎のモーツァルト 尾崎喜八詩集』『私の衆讃歌』『尾崎喜八詩集』『夕べの施律』『自註 富士見高原詩集』『その空の下で 詩集』『あの頃の私の山』『音楽への愛と感謝』『名もなき季節 富士見からの手紙』『日光と枯草』『魂、そのめぐり会いの幸福』などがある。

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