創文社オンデマンド叢書

ヒュームにおける正義と統治

文明社会の両義性

森 直人 (著者)
¥ 7,150 (本体: ¥ 6,500 + 消費税: ¥ 650)
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商品説明

本商品は「旧ISBN:9784423851081」を底本にしたオンデマンド版商品です。
初刷出版年月:2010/08/01

「文明社会」とは何か。それは人々がどのように結合し交流する社会なのか。本書では、十八世紀スコットランドの哲学者デイヴィッド・ヒュームの思想に即して、この問いに対するひとつの答えを模索する。ヒュームの叙述は、人間社会が孕む不安定性を見つめつつ、一方では「正義」と「商業」を軸として社会の形成と発展の自然的な可能性を豊かに描き出し、他方では「統治」を鍵概念として社会の強制的な秩序化の峻厳な必要性を示している。さらにそこからは、ヒュームの目に映った文明社会それ自体の矛盾――正義と統治、自由と権力、諸国の調和と対立、商業発展と公債累増の間の矛盾――が明らかになる。はたして現代の我々にとって、ヒュームの描くこの両義性は、既に乗り越えられた過去なのであろうか。

【目次より】

凡例
目次
序章 文明社会と両義性
第一部 文明社会の発展 正義をめぐる思考の系列
第一章 正義 道徳論における文明社会の結合原理
第一節 自然法学の伝統とヒュームの正義論
第二節 ヒュームにおける正義の形成過程 非契約論的な「規約主義」
第三節 ヒュームの正義概念の特質 状況依存的な可変性
第二章 商業発展 経済論における文明社会発展の法則性の解明
第一節 商業発展の物質的側面 経済の自律的な発展メカニズム
第二節 商業発展の文明論的側面 知識と道徳性、法と制度の洗練
第三節 商業発展の道徳的側面 正義と商業の相互連関
第三章 自由の擁護 国内政治に関する文明化認識の展開
第一節 法学的な自由 文明論的解釈におけるヒューム政治論の核心
第二節 国制論的な自由 ヒューム政治論に関する近年の解釈から
第三節 二つの解釈の異同と検討されるべき諸問題
第四章 国際的な調和 対外政策に関する文明化認識の含意
第一節 「ヨーロッパ共通の文明化」の視点
第二節 国際的な正義形成の理論的可能性
第三節 ヨーロッパ諸国間における商業の相互依存関係
第二部 政治社会の安定 統治をめぐる思考の系列
第五章 統治 道徳論におけるもう―つの結合原理
第一節 統治に関する規約の基本的な特徴 『人間本性論』第三巻から
第二節 統治に関する規約の構造 『道徳原理の研究』および『道徳・政治・文芸論集』から
第三節 正義と統治の衝突可能性と統治優先のロジック
第六章 自由から権力へ 国内政治に関する統治の論理の展開
第一節 ヒュームにおける自由概念の重層性
第二節 権力と自由の「規則性」に関する考察
第三節 自由をめぐる両義的な評価
第七章 勢力均衡 対外政策に関する統治の論理の含意
第一節 勢力均衡概念をめぐる理解
第二節 世界君主政論と勢力均衡論の関係について
第三節 論説「勢力均衡について」の読解
第四節 勢力均衡論と国際間正義の相互関係について
第八章 公債累増 経済論における統治の論理とその帰結
第一節 勢力均衡政策と経済論説の軍事的含意
第二節 商業社会において公債累増が生じる基本的構造
第三節 商業発展と公債累増
第四節 公債累増の帰結と自然死の意味
終章 ヒュームの二元的社会認識とその含意
あとがき

参考文献


著者
森 直人(モリ ナオヒト)
社会思想史研究者。高知大学准教授。京都大学経済学部卒業、同大学院経済学研究科経済システム分析専攻博士課程修了。博士。専門は、経済思想など。
著書に、『ヒュームにおける正義と統治 文明社会の両義性』『越境スタディーズ 人文学・社会科学の視点から』(共著) などがある。

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