創文社オンデマンド叢書

カント哲学と最高善

角 忍 (著者)
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商品説明

本商品は「旧ISBN:9784423171455」を底本にしたオンデマンド版商品です。
初刷出版年月:2008/09/01

自律思想の成立過程を最高善の概念との関連で解明、カント哲学の全体像について新たな見方を呈示する。道徳における判定原理(規準)と実行原理(動機)という二種の原理の区別に着目しつつ、最高善がカントの実践哲学および哲学全体にとってもつ意味の変化を、『純粋理性の批判』から『道徳形而上学の基礎づけ』を経て『実践理性の批判』に至るまで辿る。自律道徳は第二批判において、道徳法則が自由の認識根拠とされるとともに、最高善が純粋実践理性の究極目的として規定されることによって確立する。最後に、形而上学と道徳と宗教との関係を、最高善と知恵と哲学との関係から明らかにし、最高善がカント哲学の核心をなすことを示す。カントにとって哲学の本質は、有限な理性的世界存在者の知恵という意味で理解された“Welt-weisheit”に見定められる。

【目次より】
序論
第一章 カントにおける自由意思の概念
1WillkurとWille 2バウムガルテンにおける自由 3意思の区分 4形而上学における自由論
第二章 『純粋理性の批判』における自由の問題
5弁証論における自由論 6規準論における自由論
第三章 最高善の概念の予備的考察
7規準と動機 8最高善の概念 9動機としての最高善
第四章 規準論における実践哲学構想 道徳と最高善
10規準論の課題 11「純粋理性の規準」としての道徳法則 12形而上学から道徳への移行 13道徳から宗教への移行 14道徳と宗教との関係 15『純粋理性の批判』における要請論 16『純粋理性の批判』における最高善の概念の問題
第五章 『道徳の形而上学のための基礎づけ』における自律概念の成立
17「道徳の形而上学のための基礎づけ」の課題 18自由概念の変容 19自律概念の成立 20動機論の転換と自律思想の成立
第六章 「基礎づけ」の展開
21普通の道徳的理性認識から哲学的な道徳的理性認識への移行 22道徳の形而上学の必要 23道徳の形而上学への移行 24定言的命法の解明と自律原理の確定 25自律と目的の国との関係 26動機としての最高善の排除 27自律思想の成立における快不快の感情の問題 28『基礎づけ』における自律原理の成立
第七章 『基礎づけ』における道徳法則と自由 29道徳の形而上学から純粋実践理性の批判への移行
1)意志の自律と意志の自由
2)理性的存在者一般の意志の属性としての自由
30 「循環」疑惑と自由の演繹 31自由の演繹 32定言的命法の演繹 33実践哲学の限界規定 34『基礎づけ』における自由概念 35自由の演繹の問題 36自由の演繹における循環
第八章 『実践理性の批判』における自律思想の確立
37「実践理性の批判」の課題 38原則論の概要 自律原理の証明 39『実践理性の批判』における道徳法則と自由との関係 40『実践理性の批判』における道徳的世界としての悟性界 41純粋実践理性の対象の概念 善悪の概念 42純粋実践理性の動機 43実践理性の限界規定 44人格性の理念と人間の規定 実践理性の自己認識
第九章 『実践理性の批判』における最高善
45最高善と「純粋実践理性の弁証論」の課題 46最高善をめぐる実践理性の二律背反 47『実践理性の批判』における要請論 48『実践理性の批判』における最高善の概念 49道徳法則と最高善と神 50『実践理性の批判』における要請の論理 51『実践理性の批判』における道徳法則と自由 三つの理念の体系的統一
1)道徳法則と自由 2)道徳法則と最高善 3)自由と最高善 4)最高善に対する関係における自由の理念と他の理念との相違 5)カント哲学の根本問題
第一〇章 カント哲学と最高善
52『純粋理性の批判』における哲学と知恵 53『実践理性の批判』における哲学と知恵 54「批判」の意図と効用
結び
1)カントと形而上学の問題 2)カント哲学と最高善 3)批判哲学の本質
あとがき


著者
角 忍(スミ シノブ)
1951年生まれ。哲学研究者。高知大学教授。京都大学文学部哲学科卒、同大学院文学研究科博士課程単位取得退学。文学博士。
著書に『カント哲学と最高善』など、
訳書に、『ハイデッガー全集 第51巻』(共訳)レヴィン・シュッキング『読書と市民的家族の形成 ピューリタニズムの家族観』(共訳)マックス・ホルクハイマー『批判的理論の論理学 非完結的弁証法の探求』(共訳) 『カント全集 18 諸学部の争い』(共訳)などがある。

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