創文社オンデマンド叢書
ヘブライズム法思想の源流
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商品説明
本商品は「旧ISBN:9784423301234」を底本にしたオンデマンド版商品です。
初刷出版年月:2005/11/01
唯一なる神ヤハウェの民となる意味と精神、申命記の思想的枠組は即ちヘブライズムの源流である。法の語り手と聞き手、モーセ的伝統、王国の司法行政の特質という課題を論じ、古代イスラエル社会における法と宗教の関わり及び文化史的意義を解明する画期作。
前6世紀、南ユダ王国滅亡によりバビロン補囚を余儀なくされたイスラエル。その困難な状況下、史家たちは申命記法典を編纂するとともに、列王記までの歴史書を完成させるに至った。モーセの戒めを基にする申命記は、契約という法手続きで神に帰依する契約思想を切り開き、ユダヤ・キリスト教思想の原点をなした。古代メソポタミアとの比較から古代イスラエル法を考察、申命記のヘブライ語テキストと向き合い、その文体の不統一を丹念に繙くことで王ヨシヤによる司法行政改革を分析し、改革の総仕上げであった申命記法典編纂の全容に迫る。さらに、独自の聖戦思想により構想されたイスラエル固有のアイデンティティーを探究、史家の歴史意識に光を当てるとともに、ウェーバーのカリスマ理論から指導者モーセの権威を検証する。従来、旧約聖書学には乏しかった法制史の領域に踏み込んで、古代イスラエルにおける法と宗教の関わりを解明、ヘブライズムの本質を浮彫りにする。法の語り手と聞き手、モーセ的伝統、王国の司法行政の特質という課題を論じ、古代イスラエル社会における法と宗教の関わり及び文化史的意義を解明する画期作。
【目次より】
序 なぜ申命記が重要なのか
序章 旧約聖書の中心をめぐる諸考察とヘブライズム法思想
第一節 旧約聖書の中心を求める試みが意味するものとは 第二節 ヘブライズムの中心を求める試みが意味するものとは 第三節 申命記と申命記史家が証言する、モーセに顕現した出エジプトの神
第一部 ヘブライズムの文化的・法的環境世界
第一章 古代メソポタミアの法秩序と古代イスラエル法の独自性
第一節 古代イスラエル法の独自性 第二節 旧約聖書の律法の独自性 第三節 旧約聖書の編纂と律法の精神
第二章 古代イスラエル人が生きていた罪と罰の世界
第一節 女性を基準に判別していた姦通罪 第二節 姦通罪をめぐる審判の行方 第三節 裁きの精神
第三章 古代イスラエルにおける法共同体の成立
第一節 遊牧民の文化的伝統 第二節 「客人法」における権利と義務 第三節 裁判における権利と義務
第二部 ヘブライズム法思想における申命記の意義
第一章 旧約聖書における申命記の位置とその特質
第一節 申命記の正典上の位置 書名と本文 第二節 古代イスラエル法の特質について
第二章 申命記をめぐる文献学的研究の現在・未来
第一節 申命記をめぐる問題 第二節 研究の歩み 第三節 申命記法典編纂とヨシヤ時代
第三章 申命記改革における王国の司法行政
第一節 申命記が指し示す世界 第二節 ヨシヤの宮廷が進めた諸改革 第三節 申命記法典編纂の狙い
第四章 ヨシヤ王による占領政策と同化政策
第一節 ヨシヤの治世における政治行政 第二節 ヨシヤの構造改革 第三節 占領地における政治と宗教 第四節 ヨシヤの同化政策の光と影 第五節 新しい国家の理念と聖なる民
第五章 申命記における聖戦思想の復活と聖絶観念の成立
第一節 聖戦をめぐる諸考察 第二節 申命記的聖戦理解
第三部 ヘブライズムにおける歴史意識と申命記の遺産
第一章 歴史書編纂における申命記史家の歴史意識
第一節 旧約聖書の歴史書の編纂について 第二節 申命記史家による歴史書編纂
第二章 申命記史家によるイスラエル理解の虚構とその創造性
第一節 理念としてのイスラエルとその歴史的背景 第二節 約束の地をめぐる聖戦思想の構築
第三章 ヘブライズムから見た聖戦論の思想史的意義
第一節 国家主導の戦争がもたらしたもの 第二節 旧約聖書が掲げる戦争の問題と聖戦思想
終章 モーセ像をめぐる伝承史的考察から見たヘブライズム法思想の特質
第一節 理念型的に見た指導者としてのモーセ 第二節 祭儀的仲保者としてのモーセ 第三節 法伝達者としてのモーセとその仲保者性 第四節 預言者的仲保者と法的仲保者の間で
結び なぜモーセ的伝統が重要なのか
後書き
年表
地図
注
申命記関連文献表
略記号一覧
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著者
鈴木 佳秀(スズキ ヨシヒデ)
1944年生まれ。聖書学者。新潟大学名誉教授。国際基督教大学卒。クレアモント大学院でPh.D.取得。専門は、旧約聖書学・古代イスラエル宗教文化史。
著書に、『申命記の文献学的研究』『旧約聖書の女性たち』『アブラハム 約束を背負わされた父と子』『ヘブライズム法思想の源流』など、
訳書に、H.J.ベッカー『古代オリエントの法と社会 旧約聖書とハンムラピ法典』『旧約聖書 4 ヨシュア記・士師記』『旧約聖書 10 十二小預言書』『旧約聖書 3 民数記・申命記』(共訳)ゲルハルト・フォン・ラート『申命記』マーク・リラ『神と国家の政治哲学 政教分離をめぐる戦いの歴史』『VTJ旧約聖書注解 出エジプト記 1~18章』『VTJ旧約聖書注解 出エジプト記 19~40章』などがある。