創文社オンデマンド叢書

無と宗教経験

禅の比較宗教学的考察

冲永 宜司 (著者)
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商品説明

本商品は「旧ISBN:9784423230220」を底本にしたオンデマンド版商品です。
初刷出版年月:2002/02/01

「無」という概念を、自己否定の徹底が自ずから根底的な自己肯定へと至る事態と見做し、主に禅を題材にして意味、言語、意識などの角度から人間存在の根源事象を探った野心作。禅の原典テキストまで遡り精確な文献解釈を行いつつも、そこに表れるものを宗教経験の事柄として生きた姿を吟味、さらに西洋神秘主義など他の宗教経験との比較を通じて禅の特殊性と普遍性を浮き彫りにする。

【目次より】
序論 本書の目的
第一章 肯定としての無 禅言語の二つの次元
はじめに
第一節 牛頭宗における「無」
(1)  宗密の牛頭宗批判 (2)  牛頭宗の「空」
第二節 無が無でなくなる構造
(1)  有無の二項構造 (2)  観と境
第三節 即非の論理と空の次元
(1) 「無心」の言語地平 (2) 「即非の論理」と禅 (3) 二つの次元の通路
おわりに
第二章 禅言語の逆説構造 ウィトゲンシュタインの規則論を手がかりに
はじめに
第一節 問いが発せられる条件
第二節 対法と事物一般の相対化
第三節 意外性の感覚
おわりに
第三章 宗教経験と悟り ウィリアム・ジェイムズと白隠との比較から
はじめに
第一節 ジェイムズにおける「意識の神秘的状態」
第二節 「実在の感覚」と見性
第三節 「無」についての諸解釈
第四節 実在性の空解
おわりに
第四章 見性の心理構造 白隠を中心に
はじめに
第一節 見性に先行する条件
(1) 疑団から見性へ (2) 禅の疑団と浄土念仏行 (3) 「焦点の移動」
第二節 見性の諸特徴
(1) 白隠における見性の瞬間 (2) 見性と神秘主義的経験
第三節 自らを信じるという問題
(1) 阿頼耶識を転ずるということ (2) 禅者の自己と宗教者の自己
第五章 臨済の「無事」について 悟りと空の経験
はじめに
第一節 開悟の経験の内実
(1) 臨済の体験 (2) 修も証もなし (3) 開悟の心理構造
第二節 絶対無と空
(1) 否定の徹底 (2) 絶対無と空の論理 (3) 空の経験と阿頼耶識 おわりに
第六章 禅と本覚 『大乗起信論』における所説をめぐって
はじめに
第一節 『大乗起信論』の本覚思想の内容
(1) 『起信論』における「衆生心」の二側面 (2) 衆生心と本覚、始覚
第二節 本覚と頓悟との関係 『起信論』から禅ヘ
(1) 熏習の構造と禅 (2) 諸派における頓漸の意味
第三節 空寂知としての頓悟 宗密の荷沢禅解釈
(1) 如来清浄禅とは何か (2) 『都序』における「一心」について (3) 「体」の直示か「無」か 荷沢宗と牛頭宗 おわりに
第七章 荷沢神会の「衆生心」について 禅における自然と頓悟の問題
はじめに
第一節 荷沢神会における「衆生心」の概念
(1) 衆生心と仏心 (2) 妄念から無念へ (3) 「見性」の問題
第二節 禅における頓漸の実際
(1) 神会の頓悟概念と漸修との関係 (2) 根機と悟の実際 北宗の「観心」との対比において (3) 「見性」か「即心是仏」か 荷沢宗と洪州宗
おわりに
付論 デウス・空・救済 不干斎ハビアンの思想について
あとがき
初出一覧
参考文献


著者
冲永 宜司(オキナガ タカシ)
1969年生まれ。哲学者。帝京大学教授。京都大学大学院人間・環境学研究科博士後期課程修了。博士(人間・環境学)。専門は、哲学、宗教哲学。
著書に、『無と宗教経験』『始原と根拠の形而上学』などがある。

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