創文社オンデマンド叢書
近代日本の国際関係認識
朝永三十郎と『カントの平和論』
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商品説明
本商品は「旧ISBN:9784423710722」を底本にしたオンデマンド版商品です。
初刷出版年月:2009/11/01
この世界とは何か、を説明しようとする時、意識するとしないとにかかわらず、思い浮かべ、考えざるを得ない問いがある。それは、「人間とは何か」「国家とは何か」「国際関係とは何か」という3つの問いである。これらの問いが織りなす「世界のできあがり方」の構造を、本書は<自我・国家・国際関係>と呼ぶ。現在も世界の人々を拘束し続ける、この認識論的機制の近代日本における形成過程を、明治末から昭和前半期に活躍した哲学史家、朝永三十郎の「文脈設定者」としての思想的苦闘から描き出す。「国際関係とは何か」という、国際関係研究の根源への問いを問うには、世界国家の可能性を封じ込めた瞬間を把捉しなければならない。カントの『永遠平和のために』の単なる解説書とされてきた朝永の『カントの平和論』における、「国際」と「国家」の矛盾、という議論に、その瞬間は埋蔵されていたのである。学問領域を横断し、理論と歴史、思想と実証を交錯させて根源への問いへ挑み、21世紀の世界の見方、考え方を広く問いかける。
【目次より】
はじめに
目次
第一部 背景と枠組
第一章 国際関係認識とはなにか
第一節 問題設定
第二節 研究の射程と意義
第三節 文化としての国際関係認識
第二章 国際関係認識の研究枠組
第一節 世界認識の人類史
第二節 近代科学の世界観的前提
第三章 カントと近代国際関係認識
第一節 『永遠平和のために』解釈の焦点
第二節 近代日本における朝永以前のカント解釈
第三節 カントの世界構成の意味
第二部 朝永三十郎と『カントの平和論』
第一章 近代日本と朝永三十郎
第一節 近代日本の自意識
第二節 転換点としての明治末~大正期
第三節 新カント派の歴史的位置
第四節 朝永三十郎という人間
第五節 『カントの平和論』という著作
第二章 『カントの平和論』の成立過程
第一節 「カントの永遠的平和論の半面」
第二節 「カントの平和観に就て」
第三節 「カントの平和論」
第四節 『カントの平和論』
第五節 同時代的位置
第三章 自己申告上の契機
第一節 「解説者」のオリジナリティ
第二節 「凱旋門は一時的足る可し」
第三節 「思想上の国産奨励論に就て」
第四節 「独逸思想と軍国主義」
第五節 「拙著の批評に対して」
第六節 自己申告の評定
第四章 初期の朝氷 一九〇二~〇九年
第一節 哲学史研究の出発
第二節 哲学と人生
第三節 哲学、時代、国民性
第四節 主我と没我、類化と応化
第五節 同時代的位置
第五章 留学とその後一九〇九~一六年
第一節 留学の意義
第二節 帰朝後の活動
第三節 『近世に於ける「我」の自覚史』
第四節 『独逸思想と其背景』
第六章「カントの平和論』前後及び晩年 一九一七~五一年
第一節 哲学史研究への沈潜と人生の転機
第二節 『カントの平和論』以後
第三節 晩年の朝永
第三部 近代国際関係認識の原的形成
第一章 朝永三十郎の意味
第一節 近代日本の哲学的形成
第二節 国際関係認識の原的形成
第二章 カント解釈の系譜学 朝永以後
第一節 南原繁と高坂正顕
A 南原繁
B 高坂正顕
第二節 戦後における平和論理解
第三節 馬場伸也と最上敏樹
A 馬場伸也
B 最上敏樹
第三章 自我・国家・国際関係
第一節 近代国際関係認識の連環構造
第二節 二一世紀の世界認識
あとがき
注
参考文献
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著者
芝崎 厚士(シバサキ アツシ)
1970年生まれ。国際関係研究者、国際政治学者。駒澤大学グローバル・メディア・スタディーズ学部教授。東京大学教養学部教養学科卒業、同大学院総合文化研究科国際社会科学専攻、学術博士。専門は、国際文化論、国際関係思想。
著書に、『近代日本と国際文化交流 国際文化振興会の創設と展開 1934-45年』『近代日本の国際関係認識』『国際関係の思想史』などがある。