創文社オンデマンド叢書
首相の権力
日英比較からみる政権党とのダイナミズム
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商品説明
本商品は「旧ISBN:9784423710708」を底本にしたオンデマンド版商品です。
初刷出版年月:2009/03/01
本書は、現代デモクラシーに不可避的に伴う委任関係を捉える分析道具であるプリンシパル・エージェント理論を援用しながら、英国を中心に発展を遂げている執政府中枢研究と政党組織論の接点を探り、比較事例分析の手法を用いて首相の権力を決定づける要因が何であるのかを探究する。これにより、日英の首相を比較政治学の文脈に位置づけつつ、英国政治の脱神話化を図る。日英両国の首相が1970年代の政府内政策決定においてどのような権力のあり方を示したのかを分析することをとおして、議院内閣制が権力を創出しコントロールするその根源的なメカニズムの解明を目指す。
【目次より】
序章 問題の所在 日英比較分析の視座から
はじめに
第一節 強力な英国の首相、脆弱な日本の首相? 第二節 一九七〇年代における石油危機 第三節 本書の特徴と構成
第一部 首相職を位置づける 政党政治と執政政治との間
第一章 首相の権力とは何か 政党政治と執政政治との間に位置する首相職
第一節 首相研究の系譜 権力資源分析と首相・政権党関係のシステム・レベル分析 第二節 権力と制度 第三節 プリンシパル・エージェント理論と首相が携わる二つの「ゲーム」 第四節 首相の権力を説明する 第五節 首相研究と比較事例分析 第六節 結論
第二章 首相と執政府中枢 一九七〇年代における日英両国の政府内調整メカニズム
第一節 組織、ネットワーク、調整 第二節 執政府中枢と調整 第三節 首相の側近たち 第四節 関係省庁 第五節 結論
第三章 首相を「操縦」する 一九七〇年代における政権党組織の比較分析
第一節 プリンシパル・エージェント理論からみる地位維持ゲーム 第二節 総裁/党首の選出と審査 第三節 政権党による政府内政策決定への関与とコントロール 第四節 政権党の凝集性 非公式集団の党内配置 第五節 結論
第二部 首相の権力を検証する 比較事例分析
第四章 委任とコントロール エドワード・ヒースと保守党(一九七三年一〇月~一九七四年一月)
第一節 地位維持ゲーム 主流派連合の形成と周辺化された批判勢力 第二節 対外政策 親アラブ政策とEEC内における石油融通 第三節 財政政策 「成長へのダッシュ」政策の終わりと歳出削減 第四節 国内石油政策 「模様眺め」戦略から労働週三日制へ 第五節 結論
第五章 競合するエージェントたち 田中角栄と自民党(一九七三年一〇月~一九七四年一月)
第一節 地位維持ゲーム 対抗リーダーの取り込みと自律的な閣僚たち 第二節 対外政策 中東政策の明確化 第三節 財政政策 積極財政から歳出削減への政策転換 第四節 国内石油政策 石油二法案の作成 第五節 結論
第六章 分裂する政権党・分裂する内閣 ジェームズ・キャラハンと労働党(一九七六年四月~一九七七年一一月)
第一節 地位維持ゲーム 党内亀裂を反映する「オールスター・キャスト」の内閣 第二節 対外政策 EEC内における石油融通スキーム 第三節 財政政策 IMF危機と大規模歳出削減 第四節 国内石油政策 北海油田開発政策 第五節 結論
第七章 党内抗争の激化と閣内の平和 大平正芳と自民党(一九七八年一二月~一九八〇年五月)
第一節 地位維持ゲーム 激化する党内抗争と閣内への対立の遮断 第二節 対外政策 イラン問題と第二次石油危機 第三節 財政政策 財政再建と一般消費税導入の試み 第四節 国内石油政策 シーリング・プライス政策の採用とインフレ対策 第五節 結論
終章 議院内閣制と首相の権力
第一節 執政府中枢研究と政党組織論の接点 第二節 変化する議院内閣制 第三節 権力の創出とコントロール
あとがき
註
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著者
高安 健将(タカヤス ケンスケ)
1971年生まれ。政治学者、成蹊大学法学部教授。早稲田大学政治経済学部卒業、同大学大学院政治学研究科を経て、ロンドン大学ロンドン・スクール・オブ・エコノミクスにて博士号取得。専門は、比較政治学、政治過程論。
著書に、『首相の権力 日英比較からみる政権党とのダイナミズム』などがある。